愛犬にはいつまでも元気で長生きをして欲しい、ずっとそばにいて欲しいですね。愛犬の健康や長生き事情は「毎日の食事」に大きく左右されます。今回は、ドッグフードの種類をおさらいし、愛犬の食事選びや、いま食べているフードのチェックをしてみましょう。
(※2021年1月4日に公開された記事に、情報を追加し2021年6月30日付で更新しました。)
食生活で変わるワンコの健康や長生き事情
犬は自分の健康を維持するための栄養素を、毎日の食事から摂取し続けなければなりません。野生で暮らしていた犬の祖先達は、季節や生活環境・年齢に応じて自分自身で獲物を選び、仕留め、セルフケアを行っていました。しかし私たちヒトと暮らすようになった犬にとって、食事(摂取する栄養素の種類や分量)は自分自身で取捨選択することはできず、信頼する家族にすべてを託し暮らしています。
愛犬の食事を選ぶことや、毎日与える分量を年齢や体調に合わせ、都度見直してあげることは家族に託された大切な役割です。
知らぬ間に愛犬の体に好ましくない成分を与えてしまったり、必須栄養素の欠乏状態が続くと、健康や長生きとも縁遠くなってしまいます。今やドッグフードのブランド数は、数えだしたらきりがありません。愛犬にとってベストなフードを見つけることに迷ってしまっている方も少なくないでしょう。
愛犬に安心して毎日与えることのできる食事と出会うために、ドッグフードの種類と役割を把握し、合ったフードの選び方を知ることから始めてゆきましょう。
食事の種類と役割
愛犬の食事といえばドッグフードが定番ですが、同じように見えるドッグフードでも、それぞれに含まれる栄養素や水分量に応じて細かい分類があります。愛犬が毎日食べているドッグフードにどんな栄養素が含まれ、どんな役割を果たしてくれているのかを知ることから始めてゆきましょう
総合栄養食
「総合栄養食」は、犬が毎日必要とする栄養素のすべてをバランスよく配合したドッグフードです。アメリカのペットフード品質管理団体の定める栄養量の基準値を全てクリアしたドッグフードに限り、「総合栄養食」と記載し販売することができます。犬は総合栄養食と適切な量の水を毎日摂取し続けることで、健康を維持することができます。「総合栄養食」であることはドッグフード選びの大切な条件といえます。
ドライフード
犬が必要とする栄養素を効率的に摂取するために考えられたドライフードは、長期保存ができ、手軽に与えることができるうえに、歯垢や歯石の付着予防も期待できる優れものです。愛犬の体質や年齢、体形に応じて給与量を調整しあたえましょう。
ウェットフード
缶詰やレトルト、チューブと様々な形状があり、風味や食感が生食に近く、嗜好性の高さが魅力です。少食欲改善や病中病後の回復食として重宝します。ドライフードに比べ添加物の配合が多い点は難点ですが、原材料をきちんと確認し、良質なフードを選びましょう。
間食
しつけのご褒美や愛犬とのコミュニケーションに欠かせない「オヤツ」は間食とも呼ばれ、主食となるドッグフードとは栄養バランスが大きく異なります。間食と呼ばれるドッグフードは肉や魚、チーズなど風味が強く、犬の好みの素材を主原料に用いています。そのため愛犬の大好物になることは間違いありませんが、嗜好性の高さが原因となり主食より間食ばかりを欲しがったり、与えすぎによる肥満を引き起こしてしまう場合もあるので注意しましょう。
〈関連記事〉
安全性バッチリ! ワンコのおやつ、無添加ジャーキーの工場レポート
療養食
療養食は腎臓や尿路の疾患、心臓疾患、アレルギーなど持病の治療や肥満の解消、病中病後の回復期などに用いる特別食です。それぞれの症状に応じて原材料や栄養バランスが調整されているので、健康な犬の日常の主食として与えるドッグフードではありません。病気や不調による症状の改善を期待できる点が魅力ですが、家族の独断で給与量や給与期間を判断するとかえって症状の悪化を招く場合もあります。給与は獣医師の処方、診断が原則となる特別なドッグフードです。
副食
副食はフリカケやオヤツ、ガムなど主食以外の目的で与えるドッグフードの総称です。様々なタイプがあり、形状やカロリー、給与対象となる犬の年齢も異なります。あくまでも主食のトッピングやご褒美と考えておきましょう。
一般食
一般食は、総合栄養食の基準値を満たしていない主食向けドッグフードです。一見すると総合栄養食との目立った違いはありませんが、栄養面は片寄りがあり犬の必須栄養素が欠乏しているので、長期間の給与は必須栄養素欠乏症を招く場合があります。
栄養補完食
栄養補完食は持病や皮膚トラブル、加齢による不調などが気になる時に与えるサプリメントなどです。愛犬に必要な特定の成分や栄養素を追加補給することができ、市販のドッグフードを愛犬用にアレンジしたい時に重宝します。
カロリー補給食
カロリー補給食は痩せすぎ、妊娠授乳中、病中病後、子犬の発育期など少量で効率的にカロリー摂取量を増やしたい時に用います。粉ミルクやブドウ糖チューブ、流動食と形状や成分も様々で状況に応じて使い分けができ、嗜好性が高い点が魅力です。
適切な量の水分
手軽に与えることができるうえに、栄養バランスも整った総合栄養食ですが、素材本来の栄養素を消化吸収し、健康維持に役立てるためには十分な量の水分を合わせて摂取しなければなりません。ドライフードは長期保存や粒形状の維持、様々な素材を凝縮するために含有水分量が10%以下になるよう加工されています。一方で、犬が本来口にしていた生肉や雑食性の食べものには60~70%もの水分が含まれています。慢性的な摂取水分量不足は思わぬ体調不良を招く原因となるので、毎日の水分摂取量にも注目しておきましょう。
〈関連記事〉
ライフステージ別、フード選びの基本
子犬期
子犬は誕生からわずか1年という短い期間で、体重が10倍以上に増え、骨格や内臓機能、筋肉、被毛と心身共に急速な成長を遂げます。この時期、健康的な成長を支えるために良質な栄養を摂取し、適度な運動習慣が欠かせませんが、まだまだ体が小さく、内臓機能も未発達な子犬は一度にたくさんの食事を食べ、消化吸収することができません。少量を複数回に分けた食生活を心掛けましょう。
子犬期は、一生分の成長を遂げる大切な期間だからこそ、良質で栄養バランスの整った子犬用ドッグフードを必ず選びましょう。
〈関連記事〉
成犬期
成犬とは1歳~6歳ごろまでを呼びます。1歳を過ぎると、アレルギーなど個々の体質の違いや特徴が明確になる上に、少食や偏食といったお悩みも気になり始めます。
この時期、つい愛犬の嗜好性重視でドッグフードを選びがちですが、嗜好性の高いドッグフードの中には添加物や油分が過剰に配合された製品もあり、愛犬の肥満や口内トラブルの一因になることもあります。愛犬にいつまでも元気で暮らして欲しいからこそ、毎日の食事は良質で安全性が高く、体質に合った総合栄養食を選びましょう。
またオヤツは1歳以上を対象としたタイプが多く、1歳を超えオヤツデビューする愛犬も多いでしょう。愛犬の肥満予防のためにも、毎日の食事は主食とオヤツの合計値でカロリー摂取量を調整しましょう。
高齢期
犬は6歳を超えると徐々に白髪が目立ち始め、筋肉の減少や加齢による変化が起こり、内臓にも機能低下や不調が起き始めます。日ごろから愛犬の食欲や便の状態、体重の増減などをこまめにチェックし、年齢や体質に応じたドッグフード選び、給与量の見直しを心掛けてゆきましょう。
〈関連記事〉【専門家監修】シニア犬(老犬)の食事のポイントと注意点
代表的な食事選びのお悩み
まいにち食欲旺盛!は、かえって不自然
愛犬も私達と同様に気分の浮き沈みがあったり、疲労やストレスを感じる日、気分のいい日があります。
年齢や生活習慣、運動量によっても食欲は変動し、1歳を過ぎると発育期の子犬のように食事を催促したり、待ち遠しいと感じることは少なくなってゆきます。食事をするスピードが落ちたり、完食までに時間がかかるのも当然のことです。
また、犬は発情期の前後にホルモン分泌量の増減があり、単に好き嫌いという理由以外でも食欲は変動します。愛犬のこのような変化は決して単なるわがままではなく、自然な現象であるということを知っておいてあげましょう。
食いつき
CMやSNSで目にする犬達は目の前のドッグフードを勢いよく完食していたり、もっと欲しいと催促をする様子ばかりです。こんな様子を目にすると、愛犬の少食や偏食がますます不安になるのも当然です。しかし、犬の食欲はそれぞれの年齢や体質、毎日の運動量、性格や家族との関係など様々な要因で変化します。すべての犬が食べ物に勢いよく飛びつき、一気に完食するわけではありません。大切なことは、勢いよく食べることではなく、一週間、一か月といった一定の期間でみた時に、必要量の食事が摂取できていること、体重の過度な増減がないことです。
〈関連記事〉専門家に相談!愛犬がフードを残す理由と対策
小食・食べムラ
少食や食べムラが起きるのは、珍しいことではなく当然のことです。なぜなら、家族の考える食事の適量と愛犬の考える必要量が合致していないからです。家族の考える必要量を完食すると胃もたれや膨満感に襲われたり、食べるよりも家族と遊びたいと考える愛犬もいるでしょう。少食や食べムラが続く時は、ドッグフードの切り替えや作り替えをするよりも、以下の方法をまずは試してみてください。
- 給与量を減らす
- 運動量を増やす
- 食事をする環境を見直す
〈関連記事〉【専門家監修】犬がドッグフードを食べないのは自然な行動!? 「犬の食べムラ」の原因と対策
フードジプシー
フードジプシーとは、定住地を持たないジプシーのように定番食となるフードを決めずに、日ごと、食事ごとに不特定多数のフードを与えたり、短期間で複数のドッグフードに切り替える飼い主の行動を揶揄した言葉です。
愛犬の少食、偏食を改善したいと考える家族の行動がかえって愛犬の少食、偏食を助長することもあります。毎日同じ食事が続くことは、かわいそうなことではないので、愛犬の食事選びの方法をまずは見直してみましょう。
〈関連記事〉【Instagramライブまとめ】フード選びお悩み相談会
愛犬にあったフードの選び方
良質で毎日安心して与えることのドッグフードを選ぶときは、以下5つのポイントを必ずチェックしてください。
- アレルギーの有無
愛犬のアレルギーの傾向は動物病院の検査で調べることができます。アレルギーは発症してからの対処ではなく、発症前の対策がなによりです。どんなフードや動物性タンパク質を選ぶべきか迷う時は、検査結果も参考にしましょう。 - 愛犬の嗜好性(風味・粒のサイズ・食感など)
愛犬の好みは粒のサイズや風味、食感など様々な要因で変わるので、なかなか見極めが難しい部分です。ただ犬は食べ物を咀嚼せずに丸呑みする習性があるので、どんな犬種であっても小粒のフードは食べやすく、消化吸収の負担軽減にもつながります。 - 犬の健康に好ましくない成分や不必要な成分が配合されていないか。
- 原材料の品質、必須栄養素がバランスよく配合されているか。
パッケージに記載のある、原材料表示と成分表示の二か所をチェックしましょう。
原材料表示には、配合されているすべての材料が記載されています。配合量の多い順に先頭から書かれているので、この欄を確認すればどんな 材料が使われているのか、愛犬のアレルギーとの関係などもキチンと確認できます。
成分表示には、それぞれの栄養素の配合割合がかかれています。犬が最も多く必要とする栄養素は動物性タンパク質です。良質な肉や魚から摂取できる動物性タンパク質を18%以上配合していることが理想的とされています。
こんなフードは要注意!犬の必須栄養素は動物性タンパク質
ドッグフードの中には一見ではわかりにくい表示をしている製品もあります。
例えば「ビーフ100%」とパッケージに記載されている場合でも、実際には肉そのものではなく、副産物と呼ばれる人間の可食できない部位や廃棄相当の部位を用いている場合があります。
また、タンパク質配合量18%以上の製品であっても、大豆など植物性タンパク質で代用し、犬が必須とする肉や魚を配合していない製品もあります。犬の健康を維持し、長生きを目指すためには、良質な動物性タンパク質を毎日の食事から摂取し続けることが絶対条件です。
この点は、犬の年齢や生活環境・アレルギーにかかわらず、すべての犬の共通するルールですから、常に心掛けてあげましょう。
今のフードをチェックしよう
愛犬に合うフードを選ぶために、愛犬がいま食べているフードを再チェックしてみましょう。
まずはMUSTなポイントです!以下は、すべて〇であることが絶対条件です。
- 良質で安全な動物性タンパク質を使用している
- 原材料表示欄の先頭項目が良質な動物性タンパク質である
- 保存料や着色料など犬の健康に好ましくない成分が配合されていない
- 製造や品質管理にまで配慮した安全な製品である
- 愛犬の体質にあっている
次にNice to haveなポイントです!
ワンコにも人間と同じ様に好き嫌いや気分による食欲の変動がありますから、以下の点も合わせてチェックしてゆきましょう。
- 粒の大きさや形状
- 食いつきの良さ
- 便の状態がよく、下痢や便秘になっていない
ドッグフードを選ぶときに保存期間の長さを重視される方も多いでしょう。パッケージに記載された保存期間は未開封の状態を想定しています。ドッグフードは開封後、徐々に酸化が進み風味も薄れてゆきます。ドッグフードを選ぶときは、開封後一か月程で完食できるパッケージ量であるかどうかも合わせてチェックしておきましょう。
長期休暇は食生活改善に良いタイミング!
ドッグフードは、銘柄やメーカーが代わるだけで風味や食感がガラっと変わります。同じドライフードだから大差がないと思ってしまってはいけません。毎日食べている食事が別な物に変わるということは、愛犬にとって大きな問題です。食事を切り替える時は、十分な時間をかけ、愛犬の不安を取り除きながら徐々に進めてゆきましょう。長期休暇は普段と違い愛犬とゆっくり過ごす時間が作りやすいタイミングです。この休暇を上手に活用してフードの切り替えに挑戦してみましょう。
<おすすめのフード切り替え方法>
✔ 数日~一週間かけてこれまで与えていたフードと新しいフードを混ぜながら徐々に切り替える
✔ 知育玩具を使い新しいフードを楽しみながら食べてもらい、余計な不安を払拭する
✔ しつけのご褒美やオヤツとして新しいフードを与え、愛犬に楽しみながら新しいフードに慣れてもらう
新しいフードに切り替える時、家族もつい不安な気持ちを抱えてしまいがちです。でもこの不安な気持ちを愛犬は敏感に感じとっています。新しいフードを愛犬が安心して、喜んで食べてくれるように家族も楽しみながらフードの切り替えを進めてゆきましょう。
公開日:2021年1月4日
更新日:2021年6月30日