レオ&レアのお客様のワンコに関するしつけやお悩みについて、専門家の先生にズバり回答いただくコーナー「専門家に相談! 犬のしつけ・お悩みQ&A」。今回は、ワンコの毛色の変化・退色対策・予防策についてお答えします。
【ご質問内容】
ミニチュアシュナウザーを二匹飼っていて、口髭を伸ばしています。ずっと真っ白な髭が自慢でしたが二匹とも口元の被毛の変色が気になります。真っ白な髭に戻すにはどうすればよいのでしょうか?
- ミニチュアシュナウザー(♀/11歳)のケース
しばらくphコントロールの療法食を食べていましたが、療法食を食べなくても良くなってから髭が茶色くなり見た目にも汚く残念です。毎回食事後に口を拭いています。
- ミニチュアシュナウザー(♀/3歳)のケース
この子は療法食は食べたことはありませんが、口回りが段々茶色くなっています。口髭のみなのでフードが原因と思います。フードジプシーをしています。
口元の被毛の変色と犬のヨダレとの関係
かわいらしい愛犬にふと目をやった時に、口元の変色してしまった被毛や汚れ、ヨダレで湿った姿が目に留まるとなんだか悲しい気持ちになりますね。
口元の精悍な髭がトレードマークのミニチュアシュナウザーはもちろんのこと、
- プードル
- マルチーズ
- シーズー
- ウエスティ
なども同じ悩みを抱えていることが多いです。
こだわりのカットスタイルもこれでは台無しと思ったり、時には湿った唾液特有の臭いや汚れ、茶色く変色した毛色を不快と感じることもあるでしょう。
口元の毛色の変色は、犬の唾液と大きく関係しています。犬の唾液は無色透明で強い洗浄作用があり、水道の蛇口をひねったかのように常に口内に大量に流れ続け、歯の表面に付いた汚れや雑菌を洗い流してくれています。
野生で暮らすオオカミや一昔前の犬達が歯磨きをせずとも歯垢や歯石と無縁でいられたのは、唾液の持つ高い洗浄効果のおかげで、アニメに登場するオオカミや野良犬が大量のヨダレを垂らす様子は決して大げさな姿ではなく、イヌ科の動物本来の姿です。
ヨダレによる被毛の変色の原因とステップ
唾液による被毛の変色の原因
非常に優れた機能を持つ犬の唾液も人工添加物や自然界にない成分や食べ物には十分な効果を発揮できず、洗い流すことができません。残留した食べかすや添加物が原因で歯垢や歯石が付着するという新たな問題に直面しています。
これ以外にも、
- 加齢による唾液の分泌量の減少
- 体調不良による唾液への不純物の混ざりこみ
などが被毛の変色に影響を与えます。
被毛が変色していく原因は、残留した不純物やそこから発生した雑菌です。
被毛に付着した唾液は時間が経てば蒸発しますが、混入していた不純物はそのまま残留するためです。
唾液が被毛へ付着していくステップ
食事後に唾液が被毛に付着。
↓
口を開け息をするたびに微量の唾液が飛沫となり飛び散り、更に付着。
↓
散歩や運動の後、口を大きく開け短く浅い呼吸を繰り返す際に大量の飛沫が飛び唾液が口元の被毛に付着。
ステップを通じて被毛の変色や着色は口下だけでなく、鼻の周囲や首元などじわじわと時間をかけて広範囲に及んでゆきます。家族がどんなこまめに口元を拭き取る対策を講じてもなかなか完全には唾液を拭き取ることができないのはこのためなのです。頻繁な口元を拭かれる行為は、時に愛犬へのストレスにもつながってしまうでしょう。
変色や着色への対策はカットスタイルで
一旦変色や着色してしまった被毛は、残念ながら洗浄力の高いシャンプーで洗っても元に戻すことはできません。
- 口周りの被毛を短くカットする
- スキバサミでできる限り目立たないように口周りの被毛をカットする
などで対策してゆきましょう。
ミニチュアシュナウザーの場合、精悍な髭を保ったまま変色部分をスキバサミで切り落とすことで若干ボリュームは減ってしまいますが、本来のイメージを維持することはできます。
トリミングをオーダーするときは、変色部分が気になること、対策としてスキバサミで目立たないように切って欲しいことを伝えるとイメージ通りの仕上がりになります。
ミニチュアシュナウザーの口元の変色はたくさんのご家族から頂く共通のお悩みです。トリマーさんの手法によってはあえて切り落とさずに、髭のボリューム感を優先することもありますが、家族の希望としてボリューム感よりも変色部分を目立たないように対策して欲しいということをきちんと伝えておきましょう。
口元の被毛の変色と食事の関係
ここまで一般的な口元の被毛の変化とヨダレの関係、その対策についてお話してきました。
冒頭のご質問内容に戻り、ミニチュアシュナウザー(♀/11歳)のケースについて考えてみます。
この子の場合、ご家族は療法食の給与を止めた後から口元の被毛の変色が悪化したように感じられてるようですが、考えられる原因はフードそのものだけでなく、
- 加齢
- 内臓機能の低下
- 歯垢や歯石の付着の蓄積
があります。
11歳という年齢からみても、唾液の分泌機能は低下傾向にあり十分な量の唾液は分泌されていないでしょう。更に療法食が必要という健康状態であれば内臓機能そのものにも加齢による機能低下が想定されます。高齢犬に多い歯垢や歯石も年齢相当に付着している可能性があります。
体調や年齢に合わない食事は唾液の状況を悪化させる原因になるので、これ以上の悪化を防ぐためにも、これからは愛犬に合ったフードを限定し、取り入れてゆきましょう。
フードジプシーをされているというミニチュアシュナウザー(♀/3歳)のケースは、シュナウザー特有のこだわりがあってこそのお悩みと察します。頑固といわれることも多いシュナウザーはいったん自分自身でマイナス評価をつけたフードはどんなに空腹であっても拒絶してしまいがちです。かといって家族がそのまま愛犬の空腹を見過ごすこともできず、難しい課題ですね。
フードは一見どれも同じように見えても原材料や製法が異なることで風味や食感、内臓への負担の程度も大きく異なっています。
フードの切り替えには1~2週間程度の期間をかけ徐々に進めることが推奨されていることからもわかるように、主食となるフードの切り替えは犬の内臓機能に大きな負担をあたえています。
内臓機能に負担がかかり続けると、唾液分泌にも悪影響が生じ、今回お悩みでご相談頂いている被毛の変色にもつながってゆきます。
3歳という年齢を考えると、フードジプシーを解決する方法は簡単には見つけづらい状況ではありませんが、メインとなるフードを決めて徐々に給与量を増やしたり、オヤツとしてあたえていくことで「これは主食なのだな」という認識を強めてゆけるようにサポートしていきましょう。
口元の拭き取りは愛犬が嫌がらない程度に!食事は”本当にいいもの”を
犬にとって口や首元は急所であり、条件反射的に防御行為を取る部位です。家族にとって気になる口元の汚れや食後の食べかす、特有の臭いであっても頻繁に拭き取りを繰り返すことで愛犬に余計な警戒心やストレスを抱かせてしまう場合もあります。お手入れは愛犬を刺激しない程度と心掛け、カットスタイルなどで気になる変色に対策を講じてゆきましょう。
愛犬の唾液を良好な状態に保ち、体の中から元気でいるためには毎日の食事は原材料や品質にこだわった、”本当にいいもの”を選んでゆきましょう。
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