デリケートな犬の皮膚と被毛、サマーカットの注意点

健康2021年6月24日by 大谷幸代さん

ワンコ達に少しでも快適な毎日を過ごしてほしいという思いから、暑い季節はサマーカットが定番という方も多いのではないでしょうか?

まだサマーカットに挑戦したことがないという方も、全身を短く切りそろえた姿は涼しげで、一度は試してみたいと考えたことがあるかもしれません。

一見快適そうに見えるサマーカットですが、犬のデリケートな皮膚や被毛のことを考えると、むやみやたらとオススメできないのが現実です。

この記事では、愛犬の皮膚と被毛の健康のために覚えておきたいカットに関する基礎知識をまとめました。

正しい知識でカットに関するリスクを把握し、サマーカットに挑戦しましょう!

サマーカットに対する誤解とリスク

全身を短く切りそろえるサマーカットは夏の定番スタイルですが、トリマーや専門家の間では賛否両論で、意見が分かれます。サマーカットによって皮膚が大きなダメージを受けたり、被毛が再生しないなど、深刻な結果を招くことがあるからです。

誤解その1:ワンコはサマーカットをしても、涼しくない!

犬の皮膚は人間の赤ちゃんよりも薄くデリケートです。この薄い皮膚を外部からの刺激や直射日光、紫外線、風雨から守るため、全身に被毛が生え揃っています。

サマーカットになると、被毛で保護されていた皮膚が突然むき出しになるのですから、犬にとって必ずしも快適な状態とはいえません。全身への直射日光で、過度な日焼けや炎症が起こることもあります。

背部だけでなく、腹部の皮膚も直接アスファルトの反射熱にさらされる夏場のお散歩。かゆみを覚えて体を掻けば、自分の爪で薄い皮膚を傷つけてしまうこともあるでしょう。

被毛が短い状態で犬同士でじゃれ合い遊べば、擦り傷や切り傷を負うこともあります。

そしてなにより、サマーカットをしても、犬の体感温度には大きな変化はなく、かえって体感温度が上がってしまうことさえあるのは覚えておいていただきたいポイントです。犬の被毛は単なる飾りではなく、デリケートな皮膚を守るという大切な役割を担っているため、短く切りそろえることが、いかに不向きかがわかりますね。

誤解その2:抜け毛の解消にはつながらない!

サマーカットを施す理由のひとつに、抜け毛を減らしたいからという声もありますが、残念ながら抜け毛対策にはなりません。サマーカットにしたことで抜け毛が少なくなったと感じることがある場合、抜け毛の本数が減ったからではなく、抜け落ちた毛が短いため、以前に比べて毛量が減ったような印象を受けるからです。

日差しの強さを体感しはじめる5月や、湿気の多い6月になると、「そろそろサマーカットを」と考えますね。このタイミングはちょうど犬の換毛期と重なります。換毛期で冬毛から夏毛に生え変わったタイミングでサマーカットを施したことで、抜け毛が解消されたと誤解してしまうのも仕方がありませんが、サマーカットにしても犬の毛穴の数そのものは変化しません。この点は覚えておきましょう。

リスク:発毛不全など、毛質への悪影響

サマーカットは被毛へ悪影響を及ぼすことがあります。

犬は皮膚だけでなく被毛もとてもデリケートで、原因不明ではありますが、サマーカットを施したあとに発毛不全の症状がみられるケースが多いです。

具体的には、以下のようなトラブルです。

  • 被毛が伸びない
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  • サラサラだった毛質が、堅い縮れ毛に変わった
  • 薄かった被毛の色が、濃い色に変わった

被毛が元通りの姿に再生するかどうかは、サマーカット後、数か月経過してみないと経験豊富なトリマーでも専門家でもわかりません。

この発毛不全は、原因や治療法が確立されていないうえに、「去年は元通りに生えそろったので今年も同様に生えそろう」とも限りません。

サマーカットは、このようなリスクも鑑みたうえで施しましょう。

サマーカットによるトラブルが発生しやすい犬種 、しにくい犬種

サマーカット後の発毛トラブルが起こりやすい犬種としては、

  • ポメラニアン
  • チワワ
  • ダックスフンド
  • シェルティ
ふさふさ健康的な被毛、しろんちゃん(@u.shiron.u)

一方、サマーカット後のトラブルが起こりにくい犬種としては

  • プードル
  • シーズー
  • マルチーズ
  • シュナウザー

など、日ごろから定期的なカットを必要とする犬種が挙げられます。全身の毛を地肌がみえるくらいまで短く切りそろえても、1,2か月後には再度カットが必要になるほどまでに生えそろってきます。

柴犬やコーギーなど、暑さを苦手とする犬種の毛をサマーカットで地肌がみえるくらいまで短くする場合、直前まで2層構造の密集した被毛で覆われていた皮膚がむき出しになり、紫外線や直射日光によって一時的に皮膚に赤みや炎症が起こることもあります。十分注意しましょう。

暑さ対策には、念入りなブラッシングを

ブラッシングですっきり!ポワロくん

暑い季節の被毛のお手入れのコツは、念入りなブラッシングです。

犬は年に2回の換毛期に、夏毛と冬毛が生えかわります。暑い季節には固くしっかりとした夏毛に、冬にはフェルト状で保温性の高い冬毛に生えかわります。

夏毛は通気性がよく、暑い季節でも体の表面に熱や湿気がこもりにくい構造になっています。しかし、この夏毛に冬毛が巻き付いていると、本来の通気性を発揮できません。ブラッシングでは、この抜け残りの冬毛を取り去ることがポイントです。

抜け残った冬毛は、

  • 首回り
  • 顎から胸
  • 脇の下
  • 下腹部
  • 尾の付け根
  • 太もも

などに溜まりがちです。これらの部位は、日ごろ家族が触れる機会が少なく、ブラッシング怠りがちであるため、抜け毛が抜け落ちずに残留しがちです。

特に尾から太ももにかけては、お座りをするたびに被毛が圧縮され、抜け毛が座布団状態になっています。

背中や飾り毛など、家族が触れやすい箇所だけでブラッシングが終わってしまっているというパターンはとても多いですから、これからの季節は暑さ対策を意識し、冬毛がたまりやすいポイントを念入りにお手入れしてゆきましょう。

確実な暑さ対策につなげるためには、先端に金属製パーツの着いた抜け毛取り専用ブラシを活用したり、トリミングショップの抜け毛対策メニューの利用も効果的です。

トリミングショップでは、シャンプーで抜け毛の大半を洗い流し、大風量のドライヤーで念入りに抜け毛を吹き飛ばしてくれます。

サマーカットにしなくても、抜け毛をすっきりと取り除くだけでも十分な効果は期待できますよ。

海やプールにはサマーカットもおすすめ

海を楽しむcookieちゃんとヴィアンカちゃん(@cookiecookie323)

賛否両論あるサマーカットですが、短く毛を切りそろえることによるドライヤータイムの大幅な短縮が、愛犬の疲労を軽減するというメリットもあります。

アウトドアやプール遊び、海でのレジャーなど、体を濡らして遊ぶ機会が多いワンコや、シニアになりシャンプー後の疲労が気になる場合は、サマーカットが向いているケースもあります。

サマーカットを施す時は以下のような点を心掛け、デリケートな皮膚を保護する対策をしておきましょう。

  • カット後、数日間は、急激な日焼けを防ぐためにお出かけ時にTシャツなど薄手の洋服を着せる
  • 体を掻いた時に皮膚を傷つけてしまわないように、爪は短く切りそろえておく
  • ノミ・マダニ予防のための防虫対策を、いつにも増してしっかりと

万が一、愛犬の皮膚に、赤みや湿疹、かゆみなどの異変が見つかった場合や体調の変化があった時はすぐに動物病院を受診し早めのケアにつとめましょう。

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記事執筆&監修:
大谷幸代さんドッグトレーナー

大学在学中にイギリスへの短期留学を経験し犬とのライフスタイルを学びペットビジネスの世界へ。20年以上にわたり生体販売、トリマー、トレーナー、店舗開発、成田空港内ペットホテル開業にと従事。現在は3匹の保護犬と1匹の保護猫をパートナーにペット用品の開発、コラム執筆、専門学校講師として活動中。

WANTIMES は、愛犬の健康を第一に考えた 国産ドッグフードブランド「レオ&レア」が お送りしています。

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