【専門家監修】どんな味が好き?犬の味覚と好き嫌いの関係

食事2022年10月6日by 大谷幸代さん

犬といえば優れた嗅覚や聴覚が話題になりますが、「味覚に関してはどうなのだろう」と疑問がわいたことはありませんか?嗅覚や聴覚とおなじく、人間の数百、数千倍とすぐれた機能を持つのであれば、毎日のごはんやオヤツ選びも、ワンコの好みに合わせてあげたくなりますね。この記事では、ペット食育士の大谷幸代さん監修のもと、研究者の間でもまだ議論の真っ最中とされるワンコの味覚について解説します。

犬と人間の味覚の違い

犬も人間と同じように味覚があり、食べ物の味がわかることが専門家の研究ですでに証明されています。ただし、味を区別するための味蕾(みらい)と呼ばれる舌の細胞がワンコは少ないため、人間ほど繊細には味の区別ができていないといわれています。

  • 人間が感知できる味:甘み・苦味・酸味・塩味・旨み
  • 犬が感知できる味:甘み・苦味・酸味・塩味
  • 猫が感知できる味:苦味・酸味・塩味

あらゆる動物の中でもっともグルメといわれている猫が、人間や犬よりも区別できる味の種類が少ないのは意外ですね。

<参考資料>環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」、すわ動物病院「犬・猫の味覚について


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すぐに見抜ける!治療薬入りのごはん

ワンコの食事に薬を混ぜた時、少量にも関わらずまるで口をつけてくれなかったという経験はありませんか?フィラリアなど、病気の予防薬・治療薬はもちろん、栄養補給のサプリメントにも過敏に反応する犬もいます。これは食事に、ごくわずかであっても”苦味”を感知した結果です。

人間の場合、味覚は食事を楽しむための役割が大きいですが、犬の場合は命を守るための機能としての役割がほとんどです。苦味を感知する味蕾(みらい)は犬の舌の先端部分に位置しているため、食べ物に口を付けた瞬間に苦味を見極めます。動物にとって苦みがある食べ物は、なんらかの毒性や命の危険のサインです。苦みを感知すると、たとえ空腹であっても食べるべきではないと判断するのです。

ワンコに薬を飲ませる時は、薬の苦みが消えるほど風味の強い缶詰やチーズなどを食事に混ぜると、意外にもその存在に気が付かずに食べてくれます。ぜひ試してみてください。

犬の舌の奥側には、甘味と塩味を感知する味蕾(みらい)が並んでいます。甘味は人間と同じく、ワンコに幸福感や満足感をもたらしてくれます。塩は動物の生命維持に欠かせない栄養成分ですから、毎日必要量の摂取が必要です。塩分の欠乏は体調不良を招く場合もあるので、塩味の感知は、健康管理に大きな意味を持ちます。

このように味蕾の数は人間よりも少ないものの、犬の舌には安全で健康に暮らすために欠かせない大切な機能が備わっていることがわかりますね。

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食べ物の好き嫌いはどう決まる?犬ならではの判断基準

愛犬の食事やおやつタイムの様子から、食へのこだわりや好き嫌いがあることは、すでに誰もが気が付いているでしょう。でも、いつものドッグフードやオヤツってワンコたちにとって”美味しい”のでしょうか?

犬の食の好みは、味だけではなく、におい・食感・食後の体調・膨満感などさまざなまな要素から判定されています。一見すると同じ原材料のドッグフードでも使用されている肉や油脂の品質や風味、開封後の風味の劣化まで敏感に感じ取っています。また、以下の要素はフードごとに異なっており、ワンコにとってはひとつひとつ全くの別物であるため、メーカーによって食べたり食べなかったりといったことが起こるのです。

  • 製法

油脂でコーティングをする、オーブンで焼き上げる、フリーズドライ加工するなど、ドッグフードには様々な製法があり、製法によって噛み砕き易さや食感が大きく異なります。

  • パッケージの素材

パッケージの材質や開封後の保存方法によって風味や酸化の度合いが異なります。密閉度の低い容器で保存をすると、酸化した脂の臭いが強まり、素材の風味は消え、味気なさだけが漂います。

  • 粒のサイズ、固さ

粒の形状や噛み砕きやすさも人間にはわからないものの、ワンコ達はしっかりと見極めています。

ワンコは味だけでなく、様々な要素からドッグフードやオヤツを判定し、好き嫌いを決めているのです。少食や偏食などでお悩みの場合は、理由が「味が嫌いだから」とひとくくりにせず、ここで挙げたような要素ひとつひとつについて検討してみると解決への糸口がみつかるかもしれません。


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味覚は加齢で変化する?

ワンコも人間と同じく、視覚や聴覚、嗅覚は加齢とともに衰えます。味覚は判定が難しく明確な判断ができませんが、シニア期を迎えると食の好みが変わったり、食べることに無関心になったり、ときには過度な食欲を見せたりと、傾向にムラが目立つようになります。このような変化は、身体機能や内臓機能の衰えなど、さまざまな機能と連動して起こると考えられています。シニア期を迎えたワンコたちの食生活の注意点については、こちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある方はチェックしてみてください。

変化はある日突然起こるのではなく、毎日少しずつ進むもの。ゆっくりと進むからこそ、家族は焦らず、心配しすぎずに、今の愛犬にとってのベストな食べ方、食事量に調整をしてゆきましょう。


<関連記事>【専門家監修】老犬に適切な食事量や頻度はどれぐらい?
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まとめ

ワンコにとって、毎日の食事は生活の幸福度を大きく左右する大切な習慣のひとつ。食事の好き嫌いは単なるワガママ、気まぐれではなく、さまざまな理由やこだわりの結果であることを知っておくと、食事選びがスムーズになり、おいしい毎日が過ごせるようになるはずですよ。

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記事執筆&監修:
大谷幸代さん大谷幸代さんドッグトレーナー

大学在学中にイギリスへの短期留学を経験し犬とのライフスタイルを学びペットビジネスの世界へ。20年以上にわたり生体販売、トリマー、トレーナー、店舗開発、成田空港内ペットホテル開業にと従事。現在は3匹の保護犬と1匹の保護猫をパートナーにペット用品の開発、コラム執筆、専門学校講師として活動中。

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